機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

公開以降、中々観に行く機会がなく諦めかけていましたが、大ヒットということもあって公開期間が延長となった恩恵もあって今日、有給休暇を取得して宇都宮のMOVIXで観てきました。

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機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。


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と、ペタペタと予告編や冒頭の動画を貼っておきます。物語のあらすじについては皆さん知っているし、解説している人も結構いるだろうからバッサリとカット。

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さてさて、この『閃光のハサウェイ』は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の直系の続編として、ガンダムシリーズの生みの親の一人である富野由悠季監督の手で1989年に原作小説の上巻が発表され、中巻と下巻の3巻構成として発売されていました。

 基本的には劇場版の『逆襲のシャア』の続編ではなく、角川書店刊行の小説版『ベルトーチカ・チルドレン』

 の続編という立ち位置です。なんともややこしい事に『逆シャア』には徳間書店版の小説『ハイ・ストリーマー』という作品もあり、劇場版も含めて三者が三様に物語が異なるので、ぶっちゃけどれが本筋?となると正直悩ましくもありました。なので「公式」とされる劇場版との整合性という視点で見るなら『閃光のハサウェイ』は異質な部分が多く、また原作者である富野氏が映像化に対して拒否の姿勢を貫いていた事、物語が基本的に主人公がテロリストであり陰惨且つラストが悲劇であった事もあって「映像化は不可能」と言われ続けていた作品です。

そんな中、宇宙世紀に再び光を当てた『機動戦士ガンダムUC』が作品的・商業的に成功した事が追い風となり「UC NEXT100プロジェクト」が発表され、第1弾として『UC』の物語直後を描いた『機動戦士ガンダムNT』が劇場公開、そのラストに第2弾として『閃光のハサウェイ』の劇場版3部作の公開が公式に発表されました。


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発表された当時は、物語の内容を知るからこそ「できるの?」と言う不安が先行した感じでしたが、徐々に公開された予告を見る限りは「なんとか出来そうだな」という感じになり、監督が『ウイッチハンター・ロビン』の監督を務められた村瀬修功氏だと知って安心し、今日ようやく観ることに。それではその感想は?

まあ、単純に言えば面白かったですね。

近年の宇宙世紀作品で言うなら『UC』が大河ドラマなら『ハサウェイ』はサスペンスドラマというべき内容でした。こういう物語構成は監督の村瀬氏の手腕による点が大きいでしょう。観ている側はハサウェイの正体が「マフティー」である事を知っているから、ヒロインのギギやライバルとなるケネスとの会話にハラハラさせられるし、物語の内容を知らない方でも露骨にハサウェイの正体が分かるように敢えて演出されている事から「ひょっとして・・・」と思いながら三人の会話をドキドキしながら見ていたと思います。この三人の絡みにそれなりに時間を使っているからこそ、後半の展開が畳みかけるようなスピード感ある流れとなりラストには何やら爽快感的な雰囲気を感じる事ができました。MSの描き方も『UC』での流れを引き継いで、よりリアルなコクピットの描写や「MSが動くという事がどういう事か」を見事に描いています。その辺りはぜひ劇場でご覧になってください。特に素晴らしいのは新型MSペーネロペーの動き。見事な「宇宙怪獣」っぷりでした。

さて、一方でこの『ハサウェイ』が公開され、大ヒットしたことによって「UCが無かったことにされている」とか「UCっていらなかったじゃん」などという風潮があるのですが、そも『UC』の成功が無かったら『ハサウェイ』の映像化は不可能だった事は考えておかないといけない部分だと思います。また「UCがなかった事に」と言う部分は、ミネバがラプラス宣言をした0096年からでも9年近くが経過しており、地球連邦からすればそれはもう「不都合極まりない」ラプラス宣言を徹底して「なかった事」にしたんだと思います。「ジオンの姫君が本物の連邦憲章を公表した」という事実も、当時すでに形成されていた「ジオンへの悪感情」という部分が地球連邦の情報操作を受け入れ易い土壌になっていましたし、大多数の人々からすれば「戦争なんてもうこりごりだ、どんなに嘘に塗れて腐っていても平和な世の中の方が良い」というのが、壮絶な動乱と殺戮の時代を行きた人々の本音だったのではないでしょうか。そういう「この世界の人々から見た視点」で考えるなら、宇宙世紀の平和と発展を願ったミネバのラプラス宣言も日々の糧に生きる大衆からは「テロリストの親玉の戯言」として黙殺されたというのが宇宙世紀0105年頃の世相なのでしょう。そういう部分は『閃光のハサウェイ』の中でもタクシーの運転手や土産物屋の少女の言葉を借りて出ていましたね。「理想より今日をどう生きるか」が大切な人々からすれば、どんな高邁な理想を持っていても、マフティーがやっていることはテロリズムそのもので「迷惑極まりない」存在なのですから。

ギギが言う「失敗しない独裁者」ってのも歴史がそれは不可能だと証明しています。すでに宇宙世紀では「失敗しない」はずの独裁者やリーダーが全員失敗しているんですから。マフティーの思想の破綻はまさに『逆襲のシャア』でアムロがシャアに言った「世直しの事」が見事に当てはまっているんですよ。アムロはそれが分かっているからこそ、時間をかけてでも内部から組織を変えていく事の大切さを知っていたし、それをブライトや仲間達に託していました。まさか、その息子のハサウェイが父やその親友の「思い」を引き継がず、理想先行のシャアと同じ方法論で世の中を変えようとしている点こそが「歴史の皮肉」なんでしょうね。

だから、正直テロップの「アムロとシャアの意志を継いだ」ってのは「違くね?」と言う思いは観終わった後もまだあります。少なくともアムロの意志にはテロリズムは無かったから。

まとめると『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の第1部はサスペンスアクション劇と言う点でこれまでの「機動戦士ガンダム」シリーズには無い面白さのある作品でした。小説版と違うのは、物語全体の流れとしてハサウェイを主軸に置きつつ「市井を生きる普通の人々」の視点を織り込んでいる点で、これは見事。『UC』でもミネバとカフェのマスターの会話シーンで「あの世界を生きる人から見た視点」が描かれていて本当に印象に残っているんですが、それを上手く『ハサウェイ』でも持ってきています。それと演じられている声優さん達の演技も素晴らしい。特に印象的なのはヒロインのギギを演じた上田麗奈さんと、ラストで登場したハサウェイの理解者であり恋人でもあるケリアを演じた早見沙織さんですね。早見さん、あのシーンだけで結構「持って行き」ましたね。ハサウェイを演じた小野賢章さんとケネス役の諏訪部順一さんの演技も良かった。さて、第2部で登場するだろうハサウェイの母、ミライさんはどなたが演じるのかな?

ここから先の第2部、第3部で物語がどう描かれるか、今から楽しみ。